平成27年から日本では「基礎控除」という相続税の非課税枠が減少し、今まで相続税に縁の無かった富裕層ではないごく標準的な家庭でも相続税が課税されるようになりました。

アメリカの相続税とはどんな現状なのでしょうか?

アメリカの相続税の現状

日本ではもらう人に課税し、アメリカでは故人に課税されます。

日本の相続税は相続財産を受け継いだ人「相続人」が納税義務者となり、相続人間でその受け継いだ財産の額に応じた配分で税金を払うことになります。

ところがアメリカでは遺産税といい遺産を残した(亡くなった)方が税金を払います。

遺産総額からまず税金を差し引き、残りを相続人が相続することになるのです。実際には亡くなった方の代わりに裁判所から任命を受けた遺産管理人が納税手続きを行うことになります。

アメリカの相続税の歴史

アメリカで最初に相続税(遺産税)が制定されたのは1862年、南北戦争前の戦費調達のためにつくられたのですが、その8年後にこの税制は廃止されています。

実はその後何度も制定と廃止を繰り返すのがアメリカでの相続税の歴史なのです。

一番最近では2010年ブッシュ大統領の時代に相続税は廃止されています。ですから2010年に亡くなった方は課税なし、2011年に亡くなった方には最高60%の課税という不思議なことが起こるのです。

政治が共和党支持に振れるときは相続税が廃止され、民主党支持に触れるとまた復活するというのが今までの流れのようです。

アメリカと日本の相続税の違い

〇非課税枠、計算方法の違い

日本では遺産の総額から基礎控除(亡くなった方一人当たり3,600万円+法定相続人×600万円)を差し引いた額に相続税が課税されます。

現在の最高税率は55%となっています。

一方アメリカでは、法定相続人の数に関係なく2015年は5.43ミリオンドル(1$=120円の計算で約6億5千百万円)までは相続税がかからないうえ、生命保険金などは遺産税の対象外とされています。

現在の最高税率は40%です。

おまけに夫婦の場合はこの非課税額が通算されるため、一般家庭で次世代に遺産を相続させても10.8ミリオンドル(約130億円弱)までの財産には相続税がかからないことになっています。

また、日本ではこの非課税枠が減少の方向で改正されていますが、アメリカでは「遺産税は生涯所得に対する2重課税である」という考えの下、非課税枠拡大の方向に法律改正されている結果、こんな格差が生じてしまいました。

アメリカでは国民のほんの一部の大金持ちだけが遺産税を納税することになるのです。

〇評価方法の違い

例えば日本では株式などの有価証券を所有していた場合に、相続税がかかる価額(評価額)は時価によって算定されることとなっています。

例えば被相続人が100万円で取得した株式を死ぬまでずっと保有して亡くなる時1,000万円に時価が値上がりしていたとすれば、値上がりしている時価に相続税は課税されます。

しかしアメリカでは取得したときの価額100万円に課税される仕組みになっているのです。ですからアメリカでは値上がりしている株式は生前に売却して所得税の課税を受けるよりも、死ぬまで保有しているほうが得、節税になると考えられているのです。

〇相続税にも地方税がある!

しかしこの遺産税はあくまでも国に納税する国税(連邦税)のことです。アメリカでは日本と違って地方税(州税)がかかる州もあり、その非課税枠や税率は州により違います。

アメリカでは死ぬときにどこの州に住んでいるかで税額が違ってしまうことになるのです。

まとめ

では他の主要国では相続税はどのくらいなのでしょうか?

財務省のHPを見ると、やはりイギリス、フランス、ドイツなど他の主要国にくらべ日本の相続税負担率は、トップクラスであるのに対し、アメリカの負担率はダントツの最下位となています。

このままでは日本の富裕層が海外資産を増やしたり、日本脱出を考えたりしてもおかしくない話ですね。