貧困老人などという言葉が週刊誌などで取り上げられ、みなさんも自分の老後の生活保障が心配ですよね。

こんな時代だからこそ年金の制度と税金の関係について勉強して、少しでも不安を解消したいものです。

年金とは・・・一定期間定期的に金銭の給付を受ける制度

「年金」は大きく2つの種類に分けられます。

「公的年金」と「個人年金」です。

支払う保険料と所得控除、もらえる年金と課税される所得税および個人復興税、住民税との関係を知っていますか?知らないと損をするそのしくみを簡単にご説明します。

年金の種類

①公的年金

・国や公的機関が社会保障の一環として行う年金制度のこと ・「消えた年金」とか「年金崩壊」など悪いイメージの社会問題として取り上げられることが多い制度

公的年金は現在2種類。

「国民年金」と「厚生年金」です。

※平成27年9月までは共済年金という制度もありましたが、平成27年10月に厚生年金制度に一元化

公的年金は日本に居住するすべての人に加入することが義務付けられています。 たとえ国籍が外国であっても日本に住民票を持っている方は加入しなければなりません。

〇国民年金(基礎年金)

加入者:日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人

※自営業の方、農業従事者や20歳以上の学生、無職、フリーターの方など厚生年金に加入していない人は、公的年金2つのうちこの国民年金のみに加入

〇厚生年金

加入者:厚生年金保険の適用される企業に勤務するすべての人および国家公務員、地方公務員、私立学校の教員として勤務する人

※加入者はこの制度を通じて国民年金にも加入する被保険者に分類され、国民年金の給付である基礎年金に加えて厚生年金を受ける権利もある

※保険料の約半分を本人が負担し、残り半分はお勤めの会社、団体が負担

②個人年金

・金融期間、保険会社など民間が運営する保険商品でその保険の目的が老後の保障にあるもの
・TVコマーシャルや最近街に増えた「保険の窓口」など代理店の広告でおなじみの商品も多い

個人年金は公的年金だけでは老後資金がまだ不安だという方などが加入しています。

メリット:定期預金で積立てるより、個人年金はその掛け金を部分的に所得から控除できる

デメリット:途中解約した場合、返戻金が少なくなる恐れが生じる
※保険会社の倒産などが理由でも

支払保険料と税金

○公的年金の保険料

公的年金の保険料はその年に支払った保険料の全額が同年の所得税の課税所得から控除されます。

サラリーマンや公務員のお父さんで学生やフリーターのお子さんの国民年金保険料を負担している方は、ご自分の厚生年金保険料の他にお子さんの国民年金保険料も所得から差引くことが出来るのです。

年末調整の資料を給与の支払者に提出する際、保険料控除申告書に社会保険料控除として記載する欄がありますので、忘れないようにしましょう。

その際、「社会保険料(国民年金保険料)控除証明所」の提出も必要になります。これは毎年10月初旬に被保険者の住所地に郵送されます。

紛失した場合には再発行も可能ですが大切に保管してくださいね。

期年末調整で社会保険料控除を忘れた方はもちろん所得税の確定申告で還付を受けることも出来ます。

限後申告といって通常の確定申告期限である翌年の3月15日を過ぎていても還付申告が可能な場合もありますから、過去の控除証明書が出てきたら一度税務署に問い合わせをしてみることをお奨めします。

○個人年金の保険料

個人年金に加入するか貯金でコツコツ老後に備えるか迷っている方もいますよね。

個人年金に加入する一つのメリットとしてはその掛け金の一部が所得から控除される点にあります。

単純に計算すると毎年4万円の保険料控除があるとして、所得税率が毎年10%の方で年4千円の税金が節税になれば、25年の保険料払込期間だと10万円の節税。
所得税率20%の税率だと20万円の所得税節税となります。

現在の所得税率の上限は45%です。
年収が多く税率の高い方ほど節税効果があることになります。

また同時に住民税の節税にも繋がります。住民税の控除上限は今のところ年間3.5万円ですが個人住民税税率は一律10%なので25年で87,500円の住民税の節税です。

低金利時代が長く続いている昨今、保険にしても貯金にしても利回りの期待があまり持てない時代です。この毎年の節税は決して少ない額とはいえませんね。

年金の収入 所得税

将来もらえる年金と税金の関係をご説明します。

「えっ!長年頑張って掛け金払って、元が取れるかわからない年金にまで税金がかかるの?」と思った方。そうなんです。公的年金でも税金のかかる年金とかからない年金があるのです。

〇公的年金の収入

税金がかからない主なもの
公的年金:国民年金の障害基礎年金・寡婦年金・遺族基礎年金

厚生年金:障害厚生年金が非課税の年金

通常の国民年金の老齢基礎年金、付加年金厚生年金の老齢厚生年金、一元化される前の退職共済年金、退職年金はすべて雑所得として課税されます。

公的年金の雑所得の計算方法はその方の年齢と年金の収入額によって違ってきます。

詳しくは国税庁ホームページを参照してください。

例えば年間200万円の年金収入がある方の場合、
その方が65歳未満(その年の12月31日で判定)のときは
200万円×75%-375,000円=1,125,000円

65歳以上だと
200万円×100%-1,200,000円=800,000円が年金所得とみなされます。

所得税の額はその方に控除対象の配偶者や扶養家族がいなければ
65歳未満の方は
1,125,000円-基礎控除380,000円=745,000円が課税所得となり
5%の税率ですので37,200円(100円未満切捨て)

65歳以上だと
800,000円-基礎控除380,000円=420,000円が課税所得で
同じく5%税率なので21,000円の所得税がかかる計算になります。

実際には年金収入だけの方でもここから健康保険料や介護保険料が税金のほかにも源泉徴収されますから、手取り額はもっと少なくなってしまいます。

老後資金も厳しいですね。

なお、公的年金収入が400万円以下でその他の所得が20万円以下の方は確定申告の必要はありません。

ですが、医療費が多く医療費控除を受けたり、地震保険等の損害保険料控除の対象の保険の支払いがあるなど還付申告をすれば税金の戻る場合もありますので、

詳しくは税務署や税理士にお問い合わせください。
https://www.nta.go.jp/index.htm

〇個人年金の収入

生命保険契約によって支払われる個人年金の収入も雑所得として所得税の課税がされます。

<雑所得の計算>

雑所得の額=総収入金額-必要経費

総収入金額はその年に受取った年金の金額(配当金等の増加額があれば含まれます)となります。必要経費はちょっと面倒な計算が必要です。

年金の支払われる期間が最初から確定されている保険の場合

必要経費=年金金額×払込保険料の総額/年金の総支給見込み金額(年金金額×受取年数)

例えば毎年15万円の掛け金を30年払い込んだAさんが60歳から5年間100万円の年金をもらう場合

受取年金100万円×払込保険料の総額15万円×30年/100万円×5年=必要経費90万円

雑所得の金額100万円-90万円=10万円

この雑所得の金額が年額25万円以上の場合には、源泉徴収といってあらかじめ所得税10.21%(復興税を含む)を差引かれることとなっています。

年金から所得税等が差し引かれている場合には確定申告をしてその税金を精算します。

よく終身年金といってその方がお亡くなりになるまで一定金額がずっと支払われる個人年金がありますね。このタイプの保険の場合には年金の総支給見込み金額の計算は

年金金額×余命年数となり、
年金の支給開始日の年齢と性別による余命年数表により計算します。

例えば毎年15万円の掛け金を30年払い込んだBさん(男性)が65歳から終身年金を年間50万円ずつもらう場合

50万円×払込保険料の総額15万円×30年/50万円×65歳男性の平均余命15年=必要経費321,428円

雑所得の金額500,000円-321,428円=178,572円

必要経費の計算を自分でするのは面倒という方は契約している生命保険会社に電話で問い合わせることをお奨めします。保険会社によっては年金を支払う時の計算書に必要経費やこの年金による雑所得の額が記載してあることもあります。

税理士として毎年個人の確定申告に携わっている印象としては、20年以上前の高金利時代は保険商品も利回りの良い商品が沢山あり、雑所得として課税されるものも多かったのですが、

その後の保険会社の倒産や合併、長く続く低金利時代とともに源泉徴収されるほど運用成績が良い商品は少なくなり、元本割れしていることも少なくありません。

個人年金と贈与税・相続税

年金受給権という言葉を知っていますか?文字通り年金を受給する権利のことをいうのですが個人年金の場合、その契約者と年金受給者が異なる場合は、

その年金受給権が相続された、贈与されたとみなされ、所得税ではなく贈与税や相続税が課税されるケースもあります。

個人年金で本来年金を受取るはずの被保険者がお亡くなりになり、その年金受給権を相続人(お亡くなりになった方のご遺族)が受取る場合がそれにあたります。

お亡くなりになった方が保険料を負担していた場合は年金受給権が相続されたものとみなされ相続税の課税対象となり、

死亡した方以外が保険料を負担していてその負担者以外が年金受給権を受取る場合には贈与税の課税対象となります。

例えば妻が被保険者の年金の保険料を夫が負担していて、妻が亡くなった際にその子供が年金受給権を取得した場合には夫から子供へ年金受給権が贈与されたものとみなされるのです。

また企業がその従業員の退職金を一時払いでなく年金で支給する方法をとっていた場合、従業者が在職中にお亡くなりになりその退職年金受給権を従業員の家族が相続する場合は相続税の課税対象です。

盛り沢山の内容で、もしかしたら頭をいっぱいにさせてしまいましたかね(^_^;) ご質問等ございましたら、お問合せフォームより佐々木税理士事務所までご連絡ください。