遺志を残す遺言書

今日は民法改正のお話です。

最近、遺言書を作成される方が
とても増えています。

残された家族のために
相続財産で揉めることがないようにとの
不安から作成する方がほとんどです。

円満で円滑な相続を
みなさん望まれています。

その一方で
「遺言書」という言葉はしっているけれど
犬神家ではあるまいし
自分には関係ない・縁がないと
思っている方も
まだまだ多いのではないでしょうか?

「遺言書を残すほど財産がないから」
「あいまいにしている方が楽だから」
「そういう面倒くさいことは苦手だから」

遺言書を書かない理由はさまざまですが
財産の多少に関わらず

故人の遺志を
相続人に残すために
「遺言書」はとても有益な手段です。

税理士として他人の相続に
立ち入ることもありますが
親族同士が揉める、争う原因のひとつは
故人の考えや思いがわからない事にあります。

「お父さんが生きていたらなんて言っただろうか?」
「お父さんはこの家や土地をどうしたかったんだろう?」

遺志がわかっていたら
迷わなかったのに
わからないからとりあえず
みんなで共有ということにしよう。

と未分割のまま財産を相続して
結局その財産が有効に利用されなかったり
出来るはずの節税も出来なかった
なんていうこともあります。

「自筆証書遺言」制度

では「遺言書」はいったい
どうやって作成すれば良いのでしょうか?

遺言書には2つの種類があります。
「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

今回、2019年1月13日より
自分で書ける「自筆証書遺言」の制度が
改正されました。
13日以降に開始された相続に有効になります。

自筆証書遺言については
民法968条に

「自筆証書によって遺言を作成するには
 遺言者が、その全文、日付及び氏名を自筆しこれに印を押さなければならない。」

とあります。

これは改正後も同じです。
歳をとって字を書くのが億劫になったとしても誰かが代筆してはいけない規定です。

では、何が変わったのでしょう?

自筆証書遺言の改正点

新法では
「財産目録」が自筆不要になりました。

旧法の時は相続財産について
1つ1つその内容を
記載する必要がありました。

例えば
「自宅は長男に相続させる」
では無効として取り扱われます。

自宅の不動産を登記簿のとおり
土地は地番で建物は家屋番号で
記載しなければなりませんでした。

また
「○○銀行の預金は次男と長女で
 半分ずつ分けなさい」
というのも無効です。

銀行預金に関しては銀行名はもちろん
支店名、預金種類、口座番号も
1つ1つ記載することとなっていました。

これが結構大変な作業で
書き間違えたらその書き換える場所に
押印が必要になります。

消しゴムが使える鉛筆書きも有効ですが
時の経過により
消えてしまうことも考えられます。

新法では
この面倒な財産目録の自筆が
必要ではなくなりました。

目録をPCで作成して
プリントアウトして添付すればOK。

不動産に登記情報や
預金通帳のコピーを添付し
目録として使うことが
出来るようになりました。

現場の苦労

「それが何なの?」
と思う方もいらっしゃるかも知れません。

でもこの財産目録を自筆してもらう作業
税理士の職務として時に
その作成に立ち会うこともありますが

その現場では
間違えず記載してもらうのに一苦労。

財産の数の多い方は1日では終わらず
3日間隣につきっぱなしなんてことも。

現場レベルでは
ものすごく重要な作業でした。

ぜひ遺言書のご準備を

さて、最初の話に戻りますが
「遺言書」は家族に自分の遺志を伝える
有効な手段です。

家族が争うことがないように
「終活」のひとつとして
準備が出来るときに「遺言書」を
作成することをお勧めします。